金子兜太主宰「海程」の後続誌「海原」へ。
2025年9月の「海原愛句十句」、
山中葛子、武田伸一のおふたりにより
「海原」6月号からの十句選です。
山中葛子選
われは青鮫そのきさらぎの暁闇 掌
桐野夏生『ダークネス』新潮社 2025
『ダーク』の主人公・村野ミロが
沖縄に飛び立ったのは20年前。まさに衝撃作。
そのミロは生きて、因縁の息子ハルオを育てる。
息詰まる緊迫感、つぎつぎに明かされる事実、
桐野夏生の圧倒的な作品。
◆本の紹介はこれ
見届けよ、ミロの最後の闘いを。
桐野夏生の傑作ノワール・エンタメ最終幕!
私の愛した男たちは皆行ってしまった。
私の魂を受け止めてくれる相手はもうどこにもいない
――衝撃作「ダーク」から20年、村野ミロは生きていた。
息子のハルオは「悪」を知る旅に出るが……。
息子を守るため、凍る火の玉、ミロの最後の闘いが始まる。
圧倒的迫力で描く、著者渾身のエンタテインメントの結末はいかに。
『ダークネス』そのまえに
桐野夏生『ダーク』2002
◆本の紹介
お前に何が起きた。
お前は何をしに来た。
<40歳になったら死のうと思っている。
型に流し込まれたばかりのコンクリートが次第に固まるように、
私の決意も日に日に水分や気泡が抜け、硬化していく。
死ぬと決めてからの私は、気持ちが楽になった。>
高崎兜太句会2016年9月
他界される1年半前、とてもお元気で、兜太節健在♪
◆兜太先生、はやばやと到着。
このところJR新幹線の時刻表がかわって、
次だと遅れてしまう、とか。
来月から15分早めに始めることとなった。
句会の前にお話し。
前日、中村草田男「萬緑(ばんりょく)」の解散の会に
立ち会ってこられたとのこと。
兼題は「水田(みずた)」。
6月にこの句稿を提出しているので、
いまの季節とはそぐわない(笑)。
三句&問題句を一句選えらぶ。
今回はわれて、まずは5点の
月を抱く水田一枚ずつの物語
この句を選ぶ。
ちょっとあまいかとも思うが・・・
兜太評:素朴な句。
「月を抱(だ)く」ではなく「月抱(いだ)く」とすると
平凡の非凡となる。
問題句のみで6点となったのはこの句。
没頭すわたし秘かに棚田です
この句も選んだ。
兜太評:「没頭するわたし」と読む。
なにかに没頭して不安、孤独な状態、
「棚田」におちいった状態、自分は棚田的存在。
平坦な田でなく、立体的な「棚田」であるのがよい。
兜太先生、今月の句の評価、点数で示された。
どうも「水田」「青田」などは苦手で、
今月は<無事通過>でした(苦笑)。
オペラ「ウイリアム・テル」ロッシーニ作曲
昨年2024年11月に上演されたこのオペラ、
新国立劇場配信中! こちら
どなたもご存知の序曲、
息子の頭の上の林檎をみごとに打ち抜くテル。
オペラは4幕、
1幕 75分、2幕 55分 3・4幕 85分。
【ギヨーム・テル(ウィリアム・テル)】はゲジム・ミシュケタ
ゆたかなバリトン、恰幅いい姿態が頼もしい。
【アルノルド・メルクタール】はルネ・バルベラ
もう輝かしいテノールが響き渡る。
【マティルド】はオルガ・ペレチャッコ
さあ、これから2幕へ、いよいよヒロインの登場♪
ジョアキーノ・ロッシーニ
ウィリアム・テル<新制作> 全4幕〈フランス語上演〉
【指 揮】大野和士
【演出・美術・衣裳】ヤニス・コッコス
【アーティスティック・コラボレーター】アンヌ・ブランカール
【照 明】ヴィニチオ・ケリ
【映 像】エリック・デュラント
【振 付】ナタリー・ヴァン・パリス
【舞台監督】髙橋尚史
【合唱指揮】冨平恭平
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:依田 真宣
【ギヨーム・テル(ウィリアム・テル)】ゲジム・ミシュケタ
【アルノルド・メルクタール】ルネ・バルベラ
【マティルド】オルガ・ペレチャッコ
【ヴァルテル・フュルスト】須藤慎吾
【メルクタール】田中大揮
【ジェミ】安井陽子
【ジェスレル】妻屋秀和
【ロドルフ】村上敏明
【リュオディ】山本康寛
【ルートルド】成田博之
【エドヴィージュ】齊藤純子
【狩人】佐藤勝司
桐野夏生『光源』文藝春秋 2000
このところ桐野夏生作品を読み返しています。
この『光源』全編に強度な筆力が漲って、
420ページに及ぶ長編を一気に読んでしまう!?
「いい映画を創る」その言葉に
全てを賭けるプロデューサー、
かつての恋人だった名カメラマン、
自分を天才と信じる監督、
人気絶頂の二枚目俳優、
かつてのアイドルたちが
映画作りの現場に集まった。
光源・スポットライトを浴びたいと
熱望する人たちしたたかな姿。
それぞれの思惑は錯綜し、衝突する、
どこまでも抉るような圧倒的な力を
佐々木敦氏は
<凶暴な「虚構」の力によって
「現実」を突き通している>という。
直木賞受賞後の長編第一作。